“韓国鉄道博物館展示運転の日本製ディーゼルカー”


ソウル駅から国鉄京釜線の国電(京釜電鉄線)に乗って、1時間弱で儀旺(ウイワン)駅に着きます。駅から線路に沿って南(水原方面)へ、裏道のようなところを10分ほど歩くと、鉄道博物館があります。

▲ 鉄道博物館の外から見た展示運転のディーゼルカー

外の道路からもよく見えるところに、1両のディーゼルカーが停車しています。この車両には不釣り合いな、日本の181系こだま型電車のようなキノコ型のクーラーが屋根に乗っています。

200〜300m程度の短い区間ですが、乗客が集まるとこのディーゼルカーは、鉄道博物館の構内を往復します。

▲ 展示運転のディーゼルカーが入線

500ウオン(約60円)の博物館の入場料で乗れるのかと思い、ドアのところにいた係員に見せたところ、入場券売り場に行って300ウオンの乗車券を買ってくるようにと、流暢な日本語で教えてくれました。

▲ 一部を除いて固定窓に改造

博物館に静態保存されている新潟鐵工所製のディーゼルカーは、ドアが折戸で車内は同じ世代の日本の国鉄のキハ52のようなクロスシートですが、こちらは引き戸でシートは改造でしょうか、ロングシートになっています。

大陸サイズで車体幅が広いことを利用して、通路の中央にも椅子がありますが、これは博物館で取り付けたのかもしれません。車体には、韓国版アニメのキャラクターがついていて、子供達は大喜び。

▲ 車内はロングシート 中央の椅子は博物館で取り付け?

あとから冷房改造したのでしょう。キノコ型のクーラーは廃車発生品を流用したものと見受けました。一段上昇式の側窓は冷房化にあわせて、一部を除いて固定式に改造されています。

エンジンは、日本のキハ52のように2機搭載していますが、動いているのは片方だけ。

▲ 運転台助手席からの車窓

ドアのところで切符をチェックしていた係員は運転士でした。乗客が乗り終わると発車です。線路はカーブの先ですぐに終点になっていて、一旦停止後折り返します。

折り返し時に、運転士が前の運転台から後ろの運転台へ、車内を通って移動するとき私に、「日本の方、運転台に乗りませんか」と声をかけてくれました。私を助手席に座らせ、その横に運転士の知り合いとおぼしき老人とその孫を乗せて発車です。

運転士さんは韓国国鉄OB

韓国国鉄OBと思われる運転士さんは70歳を越えているそうで、流暢な日本語は日本語世代の証です。このディーゼルカーは「40年前に日本から輸入したカワサキ製だ」と教えてくれました。神戸の川崎車両(現在の川崎重工)です。

今では、日本製のディーゼルカーは韓国の国鉄線上から全て引退して、この車両が稼働できる最後の1両だそうです。

▲ 冷房の電源と思われるヤンマーのディーゼル発電機

片側のドアと運転台の間は、床置き型のクーラーとその電源となるエンジンと発電機セットを置く部屋に改造されています。ヤンマーのエンジンのラジエターから熱を車外に逃がすため、引き戸の戸袋窓の下の部分に換気口を設けています。

反対側は外気取り入れのため、戸袋窓が窓ガラスからルーバーに改造されています。床下には2機のエンジンを搭載してスペースに余裕がないため、大胆な冷房改造をしたものです。乗客にとって、この車両の現役時代に、機械室の奥、運転台との間に取り残されたトイレが使えなくなって問題はなかったのでしょうか。

▲ ドアの左側の部分の客室をエアコンの機械室に改造のため戸袋窓をルーバーにしている

博物館の展示運転とはいえ、40年前に日本から韓国に渡ったディーゼルカーが今でも大切に使われ、乗客を乗せて走っているのは嬉しいことです。

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