“インド コルカタの電車・バス・人力車”


コルカタはインド東部、西ベンガル州の州都で人口1200万人の大都市です。数年前までは、イギリス植民地時代のカルカッタの名前で呼ばれていました。ベンガル湾の深奥部、ガンガーのデルタに位置し、河口から100kmほど内陸のインド東部の港湾都市で、商業、経済、工業の一大中心地です。

コルカタには、1980年代にインドで最初の地下鉄が開通しています。最近になって、首都デリーにも日本のODAでデリーメトロ(都心の一部区間のみ地下で大半が高架)が開通しましたが、コルカタにはデリーにはない、興味深い乗り物があります。

満員の乗客を詰め込んだまま、1両に4箇所あるドアを全部開け放ったまま疾走する長い編成の国電。窓が小さくて暑いからでしょうか。バスや路面電車も含め、インドでは走行中にドアを閉める習慣はないそうです。

▲ コルカタの近郊電車 ドアはいつも全開のままで走る 2005/5/1

コルカタのトラムはインドで唯一の存在です。多くの系統があって、運転本数も多く、市民によく利用されています。2両連接車ですが、それぞれに車掌さんが乗っていて、前後の車両の間は行き来できません。

トラムは前が1等車で運賃が4ルピー(10円)、後ろが2等車で運賃が3ルピー(7.5円)です。1等と2等の違いは天井の扇風機の有無だけと見受けました。特に、運賃の安い2両目が混んでいるということもなさそうです。

▲ 英国植民地時代の緑の公園の中をインド唯一の路面電車が走る ドアは付いていない 2005/5/2

タクシーはインド全土で共通の、国産車アンバサダー。今でも生産が続けられている、走る“シーラカンス”です。コルカタのタクシーには冷房はなく、窓は全開。

▲ 電車通りを行くインドの国産車 アンバサダーのタクシーは黄色い車体 片目はどうしたの?

一番驚いたのは、木造車体のバスです。屋根や窓の下の部分には薄い鉄板を張っていますが、窓の部分は表面まで木でできています。強度を保つためか窓は小さく、暑いため全開ですが、雨の時はガラスを下から引き上げて閉める構造だそうです。大半のバスには車掌さんが乗っており、ドアは付いていません。

▲ コルカタ名物木造車体のバス その手前は自転車タイプのサイクルリクシャ 2005/5/1

木造バスは内装も、もちろん木製。老朽化が著しく、車体が垂れ下がっていたり、横に傾いたまま黒煙を吐きながら走っていたり、故障で立ち往生しているバスもいます。メーカは、インドの国産車TATAですが、デリーをはじめ他の都市では木造車体のバスは見かけませんでした。

バスの手前に写ったサイクルリクシャ(自転車のタクシー)は、東南アジアや南アジアではごく一般的な存在です。

▲ 木造バスの車体のアップ 外側だけではなく内装の壁や天井ももちろん木製 2005/5/2

でも、車夫がひいているリクシャ(日本語の人力車が語源だそうです)を見かけたのは、コルカタだけです。電車通りの石畳の上、リクシャの車輪にゴムタイヤは付いていないので、乗り心地は想像できますね。

▲ リクシャと呼ばれる人力車 もちろん観光用などではない 2005/5/2

コルカタの街を走る電車、バス、人力車。どれをとっても混沌とした大都会、コルカタにふさわしい存在です。

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