“韓国国鉄ムグンファ号の食堂車”


お隣の国、韓国の列車は、2004年に新幹線に相当する韓国版TGVのKTX開業後は、在来線の特急に相当する“セマウル号”、急行に相当する“ムグンファ号”と普通列車の“トングン列車”、それにソウル近郊から地下鉄に直通する電車が運行されています。

夕刻に、トングン列車でソウル駅に降り立ったとき、向こうのホームに停車中の釜山行きムグンファ号に、食堂車が連結されているのを見つけました。馬山行きのセマウル号にも食堂車があります。

▲ ソウル駅で発車を待つ釜山行きムグンファ号 向こうのホームには韓国の新幹線KTX 2006/11

KTXの開業によるダイヤ改正で少なくなったとはいえ、韓国国鉄在来線の一部の長距離列車には、2006年11月段階では食堂車が健在で した。

翌日、ソウルから国電で1時間ほどのところにある、スウォン(水原)に行こうと思っていたので、駅のインフォメーション(日本語が通じます)で適当な時間に食堂車付きのムグンファ号があるか調べてもらい、8時10分発の指定席を購入しました。

▲ ムグンファ号食堂車の業務用扉から積み込み中 窓のない部分が厨房

ムグンファ号のソウル−スウォン間の所要時間は、わずか35分。この間で食事が可能かとインフォメーションで尋ねたところ、OKの回答が得られたため、朝食は食堂車でとることにしました。

翌朝、ソウル駅のホームで待っていると、ディーゼル機関車に牽かれた列車が入線してきます。客車は8両編成で、先頭から荷物車兼電源車(何故かセマウル号の塗色です)、客車が7号車から1号車で、中間の4号車に食堂車が連結されています。

▲ 始発のソウル駅で発車待ち 食堂車の半分はカウンター席

早速、車体の中央にあるステップのない業務用のドアから、食材や飲み物が積み込まれます。

車内にはいると、中央の厨房を挟んで、カウンター席とテーブル席があり、発車前から食堂車に席を確保している乗客もいます。コーヒーの香ばしい香りが漂ってきます。

▲ テーブル席 車内販売のワゴンもやってくる

私も、時間がないので指定席には行かず、食堂車のテーブルに着きます。列車は時刻通りに発車し、ハンガン(漢江)の鉄橋を渡り一路南へ、釜山を目指しますが、2人の食堂車の女性スタッフは、まだ積み込んだ食材や飲み物の整理に追われています。

発車してから10分以上経過してからメニュー(ハングルと英語が併記)を持って注文を取りに来ましす。スウォン到着まで、もう25分を切っています。切符を見せて急いでいることを伝え(日本語も英語も通じません)、ランチボックスの中からトンカツを注文します。

▲ 7000ウオンのトンカツランチボックス あとから右上のみそ汁が付いてきた

電子レンジの“チン”の音が聞こえからしばらくすると、注文したものが運ばれてきます。韓国語で何を言っているのかわからなかったのですが、1万ウオンを出すと正解でした、3千ウオンのおつりが来たので、代引きになっているようです。

遅れてみそ汁が到着します。7千ウオンは2006年11月のレートで900円弱、韓国の国鉄運賃はJRに比べ大幅に安いものの、ウオン高の今ではソウルの物価は日本と余り変わりません。

お味は可も無し不可も無しといったところでしょうか。朝食にはちょっと重かったですね。

▲ こちらはテーブル席 持ち込み弁当の乗客も

ランチボックスには、他にハンバーグ等、数種類のメニューがありますが、右下の白い容器に入った電子レンジで“チン”する部分が異なるだけで、温かいご飯は厨房で盛りつけていますが、その他のおかずはすでに盛りつけられた状態で、列車に積み込んでいるものと見受けました。

朝の列車のため、他の多くの乗客はコーヒーを飲んでいます。中には、コーヒーだけ注文して、持ち込みの弁当、キムチを広げるおばさんも。朝から食堂車は繁盛しています。ソウルからスウォンまで、30分余りの忙しくも楽しい食堂車体験でした。

▲ こちらはセマウル号の食堂車

東海道・山陽新幹線、100系“グランドひかり”の食堂車が無くなってから、日本では食堂車を連結するのは、北斗星をはじめとするごく一部の夜行列車だけになってしまいました。

韓国も、KTXが増えると日本の後追いのようなことにならないとも限りません。チンするランチボックスとはいえ、食堂車で車窓を眺めながらリーズナブルな値段で食事が楽しめるのは今のうちかもしれません (2008年の訪問時には食堂車はカフェカーに改造されていました)。

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