先に乗車した302号によく似たジーロンの15号は、1924年の米国ブリル製。最終組み立てはジーロンで行われ、1948年にベンディゴに移動して1959年の衝突事故に遭遇するまで運行。1975年からヴィンテージトラムとして復元作業を開始。赤と白の塗色は1920年代のジーロンのトラムを再現。
▲ 2軸車15号
ドアや窓の配置、運転席の機器類や配置、運転席右横とドアの脇の折りたたみ式補助席等は、アデレードからジーロンに来た302号と同様。
▲ 15号の運転席
車内の座席はオールロングシート。バーニーカーでロングシートは、わずか2両存在するだけの貴重な1両。
▲ バーニーカーでは珍しいロングシート
訪問の前月、12月の上旬からクリスマスまで、サンタトラムとして運行したようで、車体側面に看板が残っています。ブリル79E1型の台車にモーターは25hp×2。
▲ サンタトラムの看板と2軸の台車
車庫の奥にある工房に、緑とクリームに塗り分けたバーニーカー11号がいます。15と同じ1924年製、ジーロンのバーニーカーで、1948年にベンディゴに移動。現在修復工事待ちで、公式ホームページにデータのある動態保存車15両には含まれていません。
▲ バーニーカー11号
正面にDJA DJA WURRUNG TRAM の標記がある918号は、1946年の製造。880号と同じMMTB製メルボルンのSW6型で、同じく2005年にベンディゴに入線。2017年からオーストラリアの先住民、アボリジニのアートを車体の内外に描いたトラムとして運行。
▲ Dja Dja トラムの918号
台車はMMTB No.15、モーターは40hp×4。集電装置はメルボルン当時にトロリーポールからシングルアームのパンタグラフに換装。
車内は、車体中央の2ヶ所のドアの間の床が一段低くなった部分に木製のクロスシート。
▲ 車体中央は木製のシート
その前後の台車上の床が一段高い部分には、布張りのセミクロスシート。
▲ 車体両端は布張りのシート
独立した運転室には、MMTBのRC2型直接制御器。メルボルンのW型では、制御器や台車まで自家製のようです。
▲ 918号の運転室
隣接する車庫の建屋には、立ち入り禁止のマーク。25号と17号が顔をのぞかせています。
▲ 左側の建屋は立ち入り禁止
25号は1917年にアデレードで作られたメルボルンのP型27号で1920年の公営化時に133号に改番。1947年にベンディゴに譲渡され、25号となりました。前後に2ヶ所と、中央部に4カ所の出入り口にドアはありません。1972年に観光用ヴィンテージカー4両で運行を開始した時のうちの1両です。台車はマキシマムトラックのブリル22E、モーターは65hp×2。
▲ 25号はメルボルンのP型
ベンディゴ生え抜きの2軸車17号は、1913年にアデレードで製造。同年から1948年まで、2両の“夏のトラム”のうちの1両として運行。1953年から線路クリーニング車に。公共交通機関としての運行停止の直前に衝突事故を起こし、1972年の観光用トラム運行開始時には、損傷した正面上部を撤去して使用。1975年に復旧。台車は米国ブリル21Eの部品を使って英国のBrushが改造したもの。モーターは53hp×2.
▲ ベンディゴ生え抜きの夏のオープンカー17号
左右非対称2扉の610号は、1930年にメルボルンのMMTBがつくったY型で、ワンマン運行を目指した米国の設計を導入。わずか4両にとどまり、その後はまたW型に戻っています。1965年までメルボルンで運行。その後は運転士の訓練用を経て、MMTBで保管してしていたものを2005年にベンディゴに移管。台車はMMTB No.15、モーターは40hp×4で、同時期のW型と同じ。同型の611号がシドニーのトラム博物館で動態保存中で乗ってきました。
▲ メルボルンのY型610号
改装工事中で車番がない大型車は、運転室部分の横幅が狭い車体とイコライザー式の台車からみて、メルボルのW3以前のW型と思われます。ベンディゴで保管中の該当する車両としては、1927年にMMTBでつくられたメルボルンのW2型、453号または456号でしょう。
▲ メルボルンのW2型
公式ホームページにデータのある動態保存車15両には含まれていません。
▲ 453号または456号と思われる
車庫内立ち入り禁止で近づけないのですが、17号の後ろにいる2軸車には、トラムトラックメンテナンスヴィークルの標記。公式ホームページにデータのある動態保存車15両には含まれず、詳細は分かりません。
▲ Tram Track Maintenance Vehicle
その後ろでポールを上げているのは21号。1918年にアデレードで製造されたメルボルンの188号で、1935年にベンディゴに譲渡。公式ホームページにデータのある動態保存車15両には含まれていません。
▲ もとメルボルンの21号
さらに奥に、緑と黄の虎塗りの2軸車28号がいます。1925年の米国ブリル製、ジーロンのバーニーカーで、1947年にベンディゴに移動。現在修復工事待ちで、公式ホームページにデータのある動態保存車15両には含まれていません。
▲ バーニーカー28号
車庫の奥の工房にいた2軸車84号は、1917年製のメルボルンのB型。1931年にベンディゴに譲渡。1935年にワンマン化改造。1965年に休車になり、1975年に運行再開。運転席後部のオープンの客室に側壁を設置する等の改造がなされていたものを、2009年から2010年にメルボルン時代のオリジナルのスタイルに復元。台車はブリル21E、モーターは53hp×2.
その後ろに、屋根の上に系統番号を掲げたメルボルンのW型。今後もメルボルンの35系統、シティーサークルで使用するW型をW8型に更新する工事をメルボルンからベンディゴの工房が受注して施工中。工事の完成後は、ライトグリーンとクリームの標準色に塗装して、メルボルンに帰っていきます。
▲ メルボルンのB型28号
その他に、車庫内には仮台車に乗った改修工事を待つ車体が何両か
▲ 改修工事待ちの車両
この車両は、前後のオープンデッキの運転席部分がなくなっている。
▲ 改修工事待ちの車両
車内には部材が散乱。
▲ 改修工事待ちの車両
ピットの中にカメラを差し入れて、2軸車の床下を撮ってみました。運転席の下にフートゴング
▲ 2軸車の床下
モーターとブレーキシリンダー。
▲ 2軸車の床下
枕バネも軸バネもない、貨車以下の古風なボギー台車だけが展示。
▲ スチームトラムが牽引した客車の台車
説明の看板によると、ベンディゴのトラムが電化される前、蒸気機関車スチームトラムが牽引した客車の台車なのだとか。
▲ スチームトラムの看板
ベンディゴトラムウェイズの詳細は、こちらからどうぞ。