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レイルバス

博物館が所有しているディーゼルカーは、いずれもレイルバス。1950年代の初めにヨーロッパを視察した日本の国鉄総裁が西ドイツで見つけ、開発を指示したという日本のレイルバス、キハ01、キハ02、キハ03のモデルになった車両です。

ここにいるのは、796型744-1号。型式変更前はVT98型で、1960年のMAN製。1950年から西ドイツ国鉄がローカル線に2軸のレイルバスの導入を開始。床下にエンジン1台を搭載した機械式1軸駆動のVT95型とエンジンのないトレーラーVB142型に続き、1953年から並行しながらエンジン2台で機械式2軸駆動の出力強化版、VT98型を投入。両型式を合わせて、1962年までに動力車1492両と付随車及び制御車1814両、総計3306両のレイルバスを導入。VT98型は出力150PS×2、最高速度90km/h。高出力を活かして、トレーラー2両を含む3両編成も多かったとか。2000年頃に定期運行を終了したが、今でもドイツ各地の鉄道博物館等で多数が保存され、定期的に保存運行も行われています。

▲ レイルバス796型744-1号(VT98型)

レイルバスの車体は、当時のバスと同様にリベットで組み立て。台車間には、レールを押さえて止める電磁吸着式ブレーキのようなものも装備。

▲ レイルバスの台車とレールを押さえるブレーキ

レイルバスの原型がこちら。エンジンを収納した長いボンネットが車体から飛び出ているので、"Schweineschnäuzchen"豚の鼻の愛称があるヴィスマールレイルバスT141。日本でも、過去には各地の軽便鉄道にボンネットを突き出した単端式の気動車があり、片運転台のため終点ではターンテーブルで方向転換をしていました。こちらは標準軌の車両で、両端にエンジンを装備するため前後にボンネットがあり、どちらにも走行が可能。動態保存車なので、これに乗れるかなと淡い期待を抱いてダルムシュタットに来たのだけど、稼働していたのは蒸気機関車184号だけ。豚の鼻レイルバスは、扇形庫で昼寝をしていました。

▲ レイルバスT141

ローカル線の運行費低減のため、閑散線区の単行運転専用として、1931年から1941年にワゴンファブリック・ヴィスマールが製造した2軸のレイルバス57両の中の1両で、 その中には狭軌の車両も含まれているのだとか。T141は1933年製で、フォードのトラックの部品、出力40PSのガソリンエンジンや、前進5速、後進1速のトランスミッション等をそのまま組み込んだため、運行時は2台のうち前方のエンジン1台だけを 起動し、後方のエンジンは停止しておくという無駄とも思われるシステム。最高速度40km/h。

▲ ボンネットの先端にはフォードのマークだけど今は中身はメルセデス

複数のローカル私鉄で運行後、1968年に廃車。1985年に博物館入りした後、1992年から3年をかけて動態に復元。エンジンは再整備できる状態になく、鉄道車両の燃料としてガソリンの搭載を避けるために、メルセデスのディーゼルエンジンに換装。1996年からダルムシュタット・オストからブスンガー・フォルストハウスまでの博物館ルート(廃線を活用して博物館の列車を運行していると推測)や博物館の敷地内の路線で定期的に稼働しているとのこと。

▲ 車体の両側面に梯子があり荷物は屋根に積載するらしい

▲ 2軸の台車

▲ 前後両側にある運転席

▲ 客席はボックスシート


ディーゼル機関車

次はディーゼル機関車です。

蒸気機関車より取得コストが安価で、ワンマン運行ができ、維持費や人件費も安価な、出力30〜150PSのディーゼル機関車が、1930年代の初めに開発されました。軸配置Bで背の低い入れ換え機、Köf4290号は1934年のクラウスマッファイ製。6気筒、出力125PS、最高速度30km/h。1975年まで使用。

▲ Köf4290号

軸配置Bのロッド式小型の入れ換え機、Kö1002号は1940年のDeutz製。2気筒、出力40PS、最高速度13km/h。1951年に引退。

▲ Kö1002号

軸配置Bで背の低い入れ換え機、Kö3504号は1956年のグマインダーモースバッハ製。4気筒、出力48PS、機械式トランスミッションで最高速度12km/h。1983年に博物館入り。動態保存で、ターンテーブルの周辺での入れ換え作業に活用中。

▲ Kö3504号

ロッド式でL型車体、軸配置Cの液体式ディーゼル機関車、V36型が3両。V36 102号は1940年のO&K(オーレンシュタイン ウント コッペル)製。6気筒、360PS、最高速度55km/h。軍の弾薬庫などで使用する、直火のない防爆機関車として開発。戦後は入れ換え作業に従事。機関室の側蓋が開いて、内部にシートが下がっています 。

▲ V36 102号

同一型式V36 401号と411号は1950年のMaschinenfabrik Kiel(MaK)製。6気筒、360PS、最高速度60km/h。扇形庫内の401号は整備中なのか、ボンネットのエンジンカバーが取り外された状態。

▲ V36 401号

屋外の411号は放置状態で、塗装は色あせナンバーも消えかけています。

▲ V36 411号

私鉄や産業鉄道向け、ロッド式で赤いセミセンターキャブの車体、軸配置Cの液体式ディーゼル機関車、VL12は1958年のMaK製。6気筒、240PS、最高速度56km/h。入れ替えと軽い列車の牽引の両方の用途に対応。

 

▲ VL 12号

ロッド式でセミセンターキャブの車体、軸配置Cの液体式ディーゼル機関車、360型577号。ドイツ鉄道DBが入れ替えと軽量貨物や旅客列車牽引に、1956年から1964年まで942両導入したV60型で、その後260型と261型、されに360型と361型に改番。一部はエンジン換装やラジコン 操作による無人の入れ換え機に改造、中古で国内の私鉄や産業用鉄道、ノルウェー、クロアチア、トルコなどに売却。出力640PS、最高速度60km/h。

後ろに連結した無蓋貨車に、V62ディーゼル機関車の機械室部分を搭載。

▲ 360 577-1号

別の無蓋貨車にはV62のキャブを搭載。V62は1958年のMaK製でセミセンターキャブの車体。ロッド式で軸配置Dの液体式ディーゼル機関車。8気筒、600PS、最高速度56km/h。 バラバラになっているのは、解体して修理中でしょうか。

▲ 貨車に搭載したV62のキャブ


電車

この博物館にある電車は1両だけ。雨漏り対策なのか、屋根にキャンバスがかけられた476型033号は、1936年のベルリンオリンピックあわせて68両が登場したSバーンの166型。東ドイツ国鉄時代に266型となり、更新工事で正面を3枚窓から2枚窓に改造。東西統一後の改番で476型に。出力110kW×4。

▲ ベルリンSバーン476型033号

リベット組み立てで、軸バネが板バネのSバーンの台車。ベルリンのSバーンは第三軌条集電のため、台車に集電シューを取り付け。

▲ ベルリンSバーン476型の台車


その他の車両

オープンデッキに2軸車からボギー車まで、客車も多く置かれているものの、時間切れで見学は省略しました。

▲ 荷物車でしょうか窓の少ないボギー客車

鋼製や木造の2軸貨車も多くあったものの、こちらも見学は省略。

▲ 各種2軸貨車

ラッセル車です。VORSICHTは英語のcaution。注意。

▲ ラッセル車

1962年製の保線用の巡回車。エンジン出力24PS。

▲ 保線用巡回車


屋内展示

受付のある建物の中にも展示があります。

カウンターウインドーを備えた駅の出札窓口。カウンターの窪みを通じて、ガラスの向こうの駅員とお金や切符をやりとりしました。GESCHLOSSENは英語のclosed。

▲ 駅の出札窓口

レールに関する展示もあり、

▲ レールに関する展示

ポイントや信号の切り替え器でしょうか。

▲ ポイントや信号の切り替え器

HOゲージのジオラマもあったけど、残念ながら動いていません。

▲ HOゲージのジオラマ


ダルムシュタット・クラニッヒシュタイン駅

1時間に1本のローカル列車の時刻が近づいてきました。駅は博物館から線路をはさんだすぐ向かいだけど、踏切まで大きく迂回。

▲ ダルムシュタット・クラニッヒシュタイン駅

ダルムシュタット・クラニッヒシュタイン駅は、ホームの待合室に券売機があるだけの無人駅。

▲ ダルムシュタット・クラニッヒシュタイン駅から見た鉄道博物館

入線してきたのは、ダルムシュタット中央駅行きHessische Landesbahn(HLB)の4車体連接部分低床電車。ドイツ鉄道DBから、この地域のローカル輸送を請け負っている私鉄だと思います。

▲ HLBの電車でダルムシュタット中央駅へ

ダルムシュタット・クラニッヒシュタイン鉄道博物館の公式ホームページは、こちらからどうぞ


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