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“オーストラリア シドニー パワーハウスミュージアム”

シドニーセントラル駅から電車代行バス

オーストラリア最大の都市シドニーのパワーハウスミュージアムって何? Powerhouse は元気が出る家ではなく発電所。英語で発電所は power plant や power station ですが、powerhouse との使い分けは? パワーハウスミュージアムの名前は、20世紀の初頭に市内を走るトラムや可動橋等のインフラに電力を供給するための発電所として建てられたから。1960年ごろまでに使命を終えた発電所は1988年に改装され、Museum of applied arts & sciences になり、その展示は発電所の設備ではなく、乗り物や機械、コンピュータなどの科学技術と芸術です。

▲ シドニーセントラル駅の横からライトレール代行バスに乗車

博物館のある場所はシドニーの中心部、チャイナタウンの近く。シドニー中央駅の2階を発車したダルウィッチヒル線のトラムが、道路を行く併用軌道から専用軌道に切り替わった先で、線路の横に建っています。でも、2019年の年始の訪問時には、このトラムの併用軌道の区間で、建設中のランドウィック線のトラムと平面交差する個所の線路工事のため、トラムは部分運休。歩いても行ける距離ですが、セントラル駅から LIGHT RAIL REPLACEMENT の表示のある電車代行バスで向かうことに。

▲ ダルウィッチヒル線のトラム(ライトレール)は線路工事で折り返し運転

当日の朝、メルボルンから夜行列車でシドニーに着き、街中を一日ウロウロして、赤煉瓦の博物館に着いたのが夕刻16時。チケット売り場の女性に、あと1時間だけど良いの? と言われて出遅れたことに気づいたけどもう遅い。

▲ パワーハウスミュージアムの入り口

 

パワーハウスミュージアムの鉄道車両

閉館までの1時間で、乗り物に関する展示を主体に可能な範囲で見学した様子をご覧ください。まずは鉄道車両から。

煙突に“1”のナンバーを付けた蒸気機関車。シリンダは動輪の内側に2気筒を配置し、軸配置がB1で、3軸の炭水車を連結。英国ニューキャッスル・アポン・タインのロバート・スチーブンソン会社が1854年に製造。船でシドニーに運ばれ、鉄道建設の資材を運搬したあと、1855年に開通したオーストラリアニューサウスウエールズ州で最初の旅客列車を牽引した1号機関車。

▲ ニューサウスウエールズ州の1号機関車の編成

キャブに屋根のない古典的なスタイル。機関士と機関助士の人形が乗務しています。雨や暑さを防ぐための屋根が取り付けられるのは1865年。1号機関車は Sydney、Campbelltown、Richimond、Penrith 間の旅客列車や貨物列車を牽引したけど、わずか22年間の活躍で1877年に引退して、1884年には博物館入りしています。

▲ 屋根のないキャブに乗務する機関士と機関助士

車体の両側面には、ロバート・スチーブンソン会社、1854年、製造番号958のプレート。

▲ 車体に取り付けられたメーカープレート

1号機関車が牽く列車は3両の客車を連結。1両目は1等の2軸客車。オリジナルは、1857年に英国で製造された3等客車で、シドニーの北北東120kmにある海岸のニューカッスルと内陸のメートランドをむすぶ、ニューサウスウエールズ州で2番目に開通したグレートノーザン鉄道に導入。1863年に2等車に改造され、1909年にはworkmen's van(作業員用の車両に変更。1968年にニューサウスウエールズ州北部の街カジノで見つかり、その後1号機関車の編成用に、当時の1等車に改造されたもの。

▲ 2軸の1等車

この客車は博物館の展示用として、150年前のオリジナルとは全く別の車体をつくったようです。

▲ 2軸の1等車の図面

1等車の車内はコンパートメントが3室あり、フカフカのソファー。中央の広い部屋はテーブルも備わっています。

▲ 1等車の車内

2両目の2等の2軸客車は、1854年に英国に発注した12両の2等車のうちの6号で、1855年にニューサウスウエールズ州で最初の鉄道として、シドニー−パラマタ(シドニーから西北西へ20km)線の開業初日に運行。1890年には作業員用の車両に変更。1965年から1967年に、オリジナルのスタイルに復元されました。

▲ 2軸の2等車

作業員用の車両だった1961年当時の写真。車内にベッドやストーブ、工具棚が設けられていたそうです。

▲ 作業員用車両になっていた当時の2等車

2等車には向かい合わせのシートのコンパートメントが4室あり、それぞれにドアが付いています。

▲ 2等車の車内

3両目の3等の2軸客車は、ニューサウスウエールズ州で最初の鉄道が1854年に英国に発注した12両の3等車のうちの2号。1890年には作業員用の寝台車に変更。1947年に博物館用に復元され1980年に再塗装。

3等の需要があまりに多かったため1863年には3等が廃止され、36両あった3等車は2等に名称変更されたのだとか。

▲ 2軸の3等車

3等車は背もたれのない硬いベンチシートで窓ガラスもなく、乗客は煙や煤に晒されていました。

▲ 3等車の車内

運転台の正面に窓(ベスチビュール)のない2軸の路面電車は、1898年製のシドニーのC型。1896年から1900年の間にシドニーで最初に量産された型式で、電動車56両と付随車が41両。米国ペックハム社から輸入した台車に、地元のメーカがつくった車体の組み合わせ。蒸気機関車や客車が英国製に対して、路面電車は日本の明治時代と同様にアメリカンスタイル。

▲ シドニーの路面電車C型

屋根の上に掲げた行き先は ROSE BAY。シドニーの街の東にある湾で、かつてはここまで路面電車が通っていたのでしょう。

▲ 路面電車の行き先は ROSE BAY

木造車体の側面にはカンガルーとエミューのエンブレム。

▲ ニューサウスウエールズレイルウエイズの表記

駅のホームに、もう1両の蒸気機関車1423号が停車しています。1882年にアトラスエンジニアリングが、ニューサウスウエールズ州営鉄道向けに製造したオーストリアの国産機。

▲ オーストラリアの国産機1243号

1870年代からのサウスウエールズ州の鉄道の拡張期に投入された、軸配置2Bの68両の機関車のうち、英国ピーコック社製から30両、ダブス社から26両が輸入され、国内産業の育成のため8両が地元のアトラス社で製造されています。

▲ 日本が英国から輸入したピーコック製の5500型によく似ている

ここまで、丁寧に見学していたら時間がなくなってきたことに気付き、あとは可能な範囲でざっと見ていくことに。

ホームの向かいには、1880年代のニューサウスウエールズ州営鉄道の客車。両端がオープンデッキのボギー車。

▲ オープンデッキのボギー客車

手前に置かれたいるのは作業用の軌道自転車。一般的には4輪だと思うけど、3輪でも脱線せずに走れたのでしょうか。

▲ 3輪の軌道自転車

巨大なガーラット型の蒸気機関車6001号の大型模型。軸配置は、2D22D2。実物はシドニーから電車とバスで2時間近くかかる、ニューサウスウエールズ鉄道交通博物館に6040号が保存されています。

▲ ガーラット型蒸気機関車の模型

3軸ボギーの客車を牽引している、軸配置2Cのテンダ式蒸気機関車の大型模型。

▲ 蒸機牽引の旅客列車の模型

発車時刻の案内板は、1番線から23番線まであるシドニーセントラル駅のものでしょうか。

▲ 駅の発車時刻案内板

時計が発車時刻で、その下に並んでいるのは停車駅名でしょう。

▲ 発車時刻と停車駅

秤があります。駅で荷物の重さを量るのに使用したものでしょうか。

▲ 秤

 


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