続いて、馬車をご覧いただきます。
1860から1870年代にオーストラリアでつくられた、アメリカンスタイルのライトボックスデリバリーワゴン。荷物を運搬した19世紀の4輪馬車です。御者が右手でレバーを使って後輪にブレーキをかける構造。
▲ 19世紀の荷物用4輪馬車
前面にドア、側面と背面は窓のある客室に旅客を乗せる2輪の馬車で定員2名。ハンサムキャブとよばれた、御者の席が後部の高い位置にあるタイプ。1900年ごろの製造で、タクシーに相当する用途に使用。オーストリアで初めてのハンサムキャブがメルボルンに登場したのは1849年。1870年代には広く普及したのだとか。
▲ 旅客用2輪の馬車 ハンサムキャブ
2輪の車軸を板バネで受けているところから、スプリングカートとよばれる、20世紀初めの一般的な軽量商用馬車。1912年のオーストラリア製で、1950年代まで使われていたようです。
▲ 荷物輸送用2輪の馬車
1890年代のシドニーの公共交通機関。市内を行く、2頭立て乗合馬車の姿も。
▲ 乗合馬車
巨大な前輪の初期の自転車。実際に乗って漕ぐこともできるけど、床に固定されているので走りません。
▲ 初期の自転車
バイクもいろいろ。左のクラシックな機種は、ハンドルの位置が前輪より手前。
▲ クラシックなバイク
青いレーシングカーは、フランスのブガッティが1928年に製造。1500ccで4気筒の過給機(スーパーチャージャー)付きエンジンを装備し、1960年代にはオーストラリアのヴィンテージスポーツカークラブがビクトリアで開催した歴史的なレースなど、数多くのクラブイベントに参加したのだとか。
▲ ブガッティのレーシングカー
赤いクルマは、1928年英国製のオースチンセブン。1954年にオーストラリアでレーシングカーに改造され、1988年まで、ニューサウスウエールズ州周辺のアマチュアモーターレーシングイベントに参加。
▲ オースチン7
1991年にオーストラリアのフォードが製造したマーキュリーカプリ。左ハンドルは北米仕様で、25,000台以上が輸出されたのだとか。その後フォードが2016年に、トヨタが2017年に撤退して、今ではオーストラリアの自動車生産は消滅しています。
▲ フォードのマーキュリーカプリ
2001年の日本製、ホンダのインサイト。オーストラリアで販売された最初のハイブリッド車。
▲ ホンダのインサイト
1987年にダーウィンからアデレードまで、3,000kmの大陸横断ソーラーカーレースに参加した、シドニーのエンジニアがつくった初期のソーラーカー。グラスファイバーとケブラーでできた軽量車体に太陽電池を搭載し、平均時速25.6km/hで完走。参加した24台の中で7位。プライベートエントリークラスでは1位。当時は、完走できたのが半数以下の11台だったとか。
▲ 初期のソーラーカー
船の模型があります。1970年に就航した、前後にブリッジを持つ対称な船型を有する両頭型のレディーウッドワード。前後どちらにも航行できます。シドニーでは今も両頭船が運行しています。
▲ 前後に航行できる両頭船
模型の隣に操船機器。これは実物でしょう
▲ 船の操船機器
博物館の天井を見上げると、折り重なるように何機もの飛行機が空中に。上にいるプロペラの付いた翼の下に機体がぶら下がる機種は、1944年カナダのボーイング社のライセンスで製造した、水面への離着陸が可能なカタリーナ型の飛行船、フリゲートバードU。
▲ 上空には飛行機
各種のロケットやそのエンジンも展示されています。左にあるエンジンは、米国スミソニアン博物館からの貸与品。アポロ計画で月へ向かう宇宙船を打ち上げた、サターンロケットの第1段に使用されF-1ロケットエンジンのうちの1台。
▲ 空中にロケットが飛んでいる
動態保存されている世界最古のボールトン & ワットの蒸気機関。産業革命の時代に、英国のバーミンガムのエンジニアJames Wattと起業家Matthew Boultonによって作られ、1785年にウィットブレッドのロンドン醸造所に設置。麦芽の粉砕や攪拌、水とビールを汲み上げるための機器に動力を供給して、102年間稼働。引退後は博物館に寄贈され、1888年に船でロンドンからシドニーに到着したもの。定期的に動かしているそうですが、残念ながら見学日には停止中。
▲ 世界最古の稼働するワットの蒸気機関
蒸気機関で駆動する発電機。3相交流と直流発電機が直列に接続されています。
▲ 蒸気機関駆動の発電機
蒸気機関からベルトがけでプーリーを回転していた、工場の動力システム。織機と印刷機がつながっています。
▲ 織機と印刷機
その他、縦型や横型など、各種の小型蒸気機関。
▲ 各種蒸気機関
1904年の英国製、可搬式の蒸気機関。4つの車輪が付いていて、使用する場所まで馬や牛で牽いていくことができます。多くは農場で、一部は工場でも使用されたとか。
▲ 車輪の付いた可搬式の蒸気機関
1896年製の馬で牽く、蒸気機関で駆動する消防ポンプ。1922年までの26年間に、シドニーで1000回以上出動したのだとか。
▲ 蒸気式消防ポンプ
このメリーゴーラウンドも蒸気機関で駆動。
▲ 蒸気駆動のメリーゴーラウンド
往復動の蒸気機関に対して、これは回転式の蒸気タービン駆動の発電機。
▲ 蒸気タービン駆動の発電機
1889年に若いシドニーの時計職人が、フランスのストラスブール大聖堂をイメージしてつくった時計。ニューサウスウェールズ州政府が博物館用に購入して今はここに。中央の水色の部分では、太陽の周りを惑星が回っています。当時は、まだ冥王星が発見されていなかったので、海王星まで。1時間毎に音楽を奏でるとのことですが、聞かなかったような。
▲ ストラスブール時計
優雅な装飾のある真鍮製のキャッシュレジスターは、1900年の米国製。レジスターは1879年に米国人が発明し、これを使うことで会計の誤魔化しが難しくなったのだとか。
▲ キャッシュレジスター
左は1960年に航空機の状態を記録するために、オーストラリアで設計されたフライトレコーダー、別名ブラックボックス。右は1896年の米国製、初期の蓄音機。
▲ ブラックボックスとレコードプレーヤー
左は、1918年にドイツで発明された電気機械式暗号機、エニグマ暗号機。1925年にはドイツ軍が採用して3万台以上販売。第二次世界大戦中に、連合国側は暗号の解読に成功したけど、ドイツ軍は気づかずに敗戦まで使い続けたのだとか。
右は、Apple Computer Companyを立ち上げたSteve JobsとSteve Wozniakによって、1970年代半ばに設計、製造、販売されたAPPLE T。記憶装置がカセットデッキですね。
▲ エニグマ暗号機と初期のパソコンアップル1
パワーハウスミュージアムのテーマは、科学技術と芸術。閉館まで、残り僅かな時間で工芸作品を見ていきます。
▲ 芸術作品
日本のものを集めたコーナーがありました。何故か金仏壇。
▲ 日本の仏壇
Kimono もあります。
▲ 日本の着物
鎧兜も。
▲ 日本の鎧兜
Design Nation のコーナーに並ぶ民生品。オーストラリアのデザインなのでしょう。
▲ Design Nation のコーナー
17時、閉館の時間になってしまいました。受付の女性が言ってたように、1時間では足りなかった。
2020年4月現在で、パワーハウスミュージアムは新型コロナウイルスのため休館中。でも、Google Map のストリートビューを使えば、館内の展示を見て回ることができます。