クゥエー川鉄橋そばの保存機関車

クゥエー川鉄橋のそばには2両の蒸気機関車が保存されています。1両は、戦後にイギリスが持ち込んだ蒸気機関車で、この泰緬鉄道で使用されたものだそうです。もう1両は、第2次世界大戦中に日本軍が送り込んだ、もと日本国鉄のC5623号です。戦後もタイに残り、タイ国鉄719号として、泰緬鉄道で使用されてきました。保存されるときに、日本人がC5623のナンバープレートを取り付けたのではないでしょうか。赤いカウキャッチャーと平らになったキャブの屋根がタイの特長を示しています。

戦後活躍したイギリス製の蒸気機関車 タイ国鉄719号機 もと日本国鉄C5623

戦争博物館と連合軍墓地

当時の状況や遺品を現代に伝える戦争博物館はへは、ソンエウと呼ばれる小型トラックの荷台に座席(ロングシート)を取り付けた車両で行きます。バンコクのような大都市以外には、まともな市内バスはなく、ソンエウが走っています。決まった路線もあるらしいのですが、ガイドがチャーターの交渉をしてくれたので、ボラれなくてすみました。

捕虜収容所を再現した戦争博物館 Forgive But Not Forget (許そう、だけど忘れない)

戦争博物館は、ワット・タイチュポンという名のお寺の境内にありました。竹で作った当時の捕虜収容所を再現した建物が展示館になっています。手書きの日本語パンフレットも用意されています。外に出ると、爆弾の後ろに、クゥエー川鉄橋とこの戦争に関係した日本、イギリス、アメリカ、オーストラリア、タイ、オランダの国旗が描かれた碑があり、Forgive But Not Forget”と記されています。

連合軍の共同墓地

再びソンエウに乗り、カンチャナブリ駅の近くにある連合軍の共同墓地に向かいます。よく手入れされ、熱帯の花が咲いているこの墓地には、泰緬鉄道の工事に駆り出されて死んだ7000人近い連合軍の兵士が眠っています。ここ以外にも連合運の墓地はあります。カンチャナブリには、イギリス人やオーストラリア人を中心に、今でも多くの外国人が墓参にやってきます。


カンチャナブリ駅からバンコクへ

再び、普通列車でバンコクに戻るためにカンチャナブリ駅にやってきました。駅の構内には、メーターゲージ最大の蒸気機関車が保存されています。前後に2組のシリンダを持ち、それぞれの動輪がボギー構造となったガーラット型で、珍しい構造とスタイルの蒸気機関車です。

カンチャナブリ駅に保存されているガーラット型の蒸気機関車 トンブリ駅近くの機関区で見かけたもとC56の702号

帰りのバンコクトンブリー行きの普通列車は、今朝乗った列車が終点のナムトクまで行って、折り返してきたものです。再び、真ん中のクッションのある座席のついた車両に乗り込みます。バンコクまで2時間20分。気温の上がった午後は窓から吹き込む風も熱風で、しかも乾期だったため砂埃がひどく、3等車の旅は楽ではありません。ガイドの彼女も、もう列車の旅はうんざりという顔をしていました。

この列車には、欧米人の観光客も多く乗車しています。その大半がタイ人のガイドを連れています。車内を通りかかったタイ人が私に向かって英語で、“I hate Japanese” と言って来ました。ガイドに、“この人、何を言いたいのか聞いてよ”と言ったところ、“アイテニシナイホウガイイヨ”との返事が返ってきました。“死の鉄橋”を含む泰緬鉄道の工事では、連合軍や日本軍の兵士の何倍もの現地人や周辺国の人々の犠牲者が出ています。戦争から半世紀が経過しても、カンチャナブリは日本人にとってもタイ人にとっても微妙なところがあります。

トンブリー駅に到着する手前に機関区があります。もとC56のタイ国鉄702号機をちらっと見かけました。


旅のヒント

私が泰緬鉄道に乗車したのは、バンコクのトンブリ駅からカンチャナブリのクゥエー川鉄橋駅までです。鉄橋や戦争博物館の見学するため、バンコクから国鉄でカンチャナブリを往復するには、平日の場合は朝7:40にトンブリ駅を出発して夕方17:40に戻るこの列車以外に選択の余地はありません。終点のナム・トクまで往復すると、カンチャナブリで下車して観光する時間がとれません。しかし、泰緬鉄道のハイライトは、カンチャナブリから先にあるそうです。事実、カンチャナブリから大勢の欧米人観光客が乗り込んできて、列車はこの先の方が混雑していました。

戦場に架ける橋を渡ってしばらく行くと、列車は“チョンカイの切り通し”という岩山を切り抜いた狭い所を通り、さらに、先には地形が険しくて線路をひく場所が確保できなかったため、300mにわたり岸壁にへばりつくようにしてクゥエー川の中に設けた木造橋“アルヒル桟通橋”を、ギシギシいう音をたてて最徐行で渡るそうです。

土曜・日曜とタイの祝日には、ホアランポーン駅を早朝6:30に出発し、南部幹線の途中駅で大きなパゴダのあるナコンパトムカンチャナブリで観光のための時間をとりながらナム・トクを往復し、夜19:50にホアランポーン駅に戻るディーゼルカーによる観光列車が運行されます。往復運賃は、冷房無しが100バーツ、冷房車が200バーツです。2倍といっても400円の差ですから、冷房車(もとJR西日本のキハ58かもしれません)をおすすめします。詳しくは、お役に立つリンク集タイ国鉄をみてください。

バンコク郊外のバスターミナルからカンチャナブリへは、エアコン付きのバスもあります。気温の上がる午後の帰りには、バスを利用した方が楽かもしれません。列車の体験乗車を兼ねた観光バスによるツアーもあります。詳しくは、お役に立つリンク集パンダバスをみてください。

また、11月下旬から12月上旬のカンチャナブリの祭りには、鉄橋付近で花火大会があり、動態保存されている戦後に日本から輸出されたD51を一回り小さくした蒸気機関車が牽引する列車が運行され、クゥエー川鉄橋を渡るシーンも見られるそうです。その機会をとらえて、是非もう一度カンチャナブリから先を訪れたいと思っています。なお、カンチャナブリは欧米人観光客が多いため、地元の人にもバンコクより片言英語が通じるようです。


お役に立つリンク集

これからお出かけになる方や鉄道ファンの方に役立ちそうなリンクをそろえました