HOME 1/3page 2/3page 3/3page


NSW鉄道博物館の電車

1923年製のC3045号は木造鋼板張り車体の、シドニー市内や近郊の電化路線で運行した通勤型電車。片側5扉のうち、先頭の開き戸は乗務員と警備員室で、乗降用の扉は4枚の引き戸。シドニー市内や郊外の路線で使用し、1972年型のステンレス製二階建て車の導入により、1973年に引退。

▲ C3045号

車内は、3人がけと2人がけの転換式クロスシート。

▲ C3045号の車内

リベットのある初期の鋼製車体、T4310号は1927年の英国製、幅広の両開き2扉の付随車。導入時は1等車だったが、1930年に2等車に格下げ。車内は、扉間が3人がけと2人がけの転換式クロスシートで、扉と車端部の間はロングシート。片側の先頭部分に乗務員室扉があるけど、運転室の機器は装備していない付随車。1990年まで稼働。

▲T4310号

C3408号は1968年製。プラットホームを延長することなく座席数を増やす目的で導入した、二階建て電車のパイオニア。4つのプロトタイプの中の1つで、これ以後のシドニー近郊路線の電車は二階建てが標準仕様に。

鋼製台枠の上に、アルミの車体をリベットで組み立て、機器類は両端の一階建て部分の屋根上に搭載し、冷却のための通風口を設置。車内は、中間の二階建て部分が上下階とも3人がけと2人がけの転換式クロスシート。背ずりの両面にクッションのある、日本の車両と同じ転換方式。前後の台車上の一階建て部分はロングシート。試作車のためか、わずか12年の稼働で1980年に引退。

▲ C3408号

 

NSW鉄道博物館のディーゼルカー

先頭車の車体側面にSILVER CITY COMETの標記がある3両編成のディーゼルカー。先頭車は客室のない動力車で、前後両側に運転席。車体の中央部分は機関室。1937年製のオーストラリアで最初の冷房車。銀や亜鉛、鉛の産地で、シルバーシティーとよばれたNSW州の西端の街ブロークンヒルと、シドニーから西北西へ300kmのところにあるパークスとの間920kmで、付随車を最大で3両連結して運行した列車。

▲ DP104号

出力330hpの2サイクルディーゼルエンジンを4機搭載(1953年に250hpのエンジンに換装)し、トルクコンバーターを介して車軸に動力を伝達する液体式。サービス電源用に22kWの発電用エンジンも搭載。動力車は5両造られ、1950年と1982年の事故で2両が廃車となり、104号を含む3両は1989年まで稼働。

▲ 側面にSILVER CITY COMETの標記

17両造られた付随車のうち2両を展示。軽量の鋼製台枠の上に木製のフレームを組み、外装にはアルミ板を使用。1等車DB210号の車内は、中央に男女別の2ヶ所のトイレを設け、客室は2人がけの回転式リクライニングシート。

▲ 1等車DB210号

2等車のHTF208号の車内は、3人がけと2人がけの転換式クロスシート。

▲ 2等車HTF208号

ちょっとかわいいレールバスのFP1号。フォード製ガソリンエンジントラックのシャーシに、シドニーのバスメーカーが車体を架装したレールバス。6両のうち、1号と6号が片運転台で、乗降扉は進行左側のみ。2〜5号は両運転台で、前後に走行できたらしい。

▲ レールバスFP1号

1937年にローカル支線の旅客輸送用に就役したが、定員17名では収容力が不足したようで、翌年には州内の職場に鉄道職員の給与を届ける現金輸送車に転用。

▲ レールバスFP1号の側面と後部

1964年にはエンジンを換装したが、1967年にFP7号から13号が新造されたので、FP1号は1968年で運行を終了。給与の輸送は1986年まで行われていたらしい。

▲ FP1号の車内

訪問日は年始の土曜日で、週末には“SUMMER RAIL MOTOR RIDES”が行われ、NSW鉄道博物館の構内にある廃駅サールミアからディーゼルカーに乗り、廃線を使って往復40分の小旅行。その任務に当たっていたのが、車体側面にRAIL MOTORと標記したディーゼルカー。

英語のRAIL MOTORは日本語の気動車のことで、ローカル線の小運転に使用するディーゼルカーやガソリンカー、古くは蒸機動車も含まれるらしい。CPH型は1923年に、州内各地のローカル支線のフィーダーサービス用に37両(他にエンジンのない付随車が5両)製造された、電気溶接で組み立てた軽量台枠上に木造車体を乗せた機械式のガソリンカー。車内は、中央のドアの前後で1等室と2等室に分かれ、3人がけと2人がけの転換式クロスシートを装備して定員45名。

1945年にディーゼルエンジンと油圧トランスミッションに換装。最後まで使用された2両が引退したのは1985年だが、今も37両中10両以上が各地で動態保存。NSW鉄道博物館はCPH12号を所有しているはずだが、当日は館内に見当たらず。この日に乗ったCPH27号はオーストラリアの首都、キャンベラ鉄道博物館の所有らしい。

▲ CPH27号

NSW鉄道博物館の公式ホームページの中で、主な展示車両の周辺や車内を歩き回り、バーチャル見学ができます。こちらからどうぞ

 

NSW鉄道博物館の貨車

数多くの貨車も保存展示されています。主なものをご紹介しましょう。AVB7604号は1904年に牛を運搬するCW7604号として製造。1940年に有蓋車CV7604号になり、1950年代に木製のフレームを鋼製化。1964年にビスケット輸送車AVB7604号に。

▲ 有蓋車ABV7604号

隣に連結しているのは10トン積み2軸の木造無蓋貨車D5490号。1898年製造で1940年まで使用。

▲ 2軸の木造無蓋貨車D5490号

同じく、2軸木造無蓋貨車L625号。10トン積みのD型を12トン積みのL型に改造。

▲ 2軸の木造無蓋貨車L625号

S型は1906年以降、L型等の木造車体の無蓋貨車を置き換えていった鋼製車体の無蓋貨車。15トン積みのS4528号は、1914年の製造で1982年まで使用。

▲ 鋼製車体の無蓋貨車S4528号

グレインホッパーと呼ばれるバラ積みの小麦等の穀物運搬車、RU24468号は1938年製で1977年まで使用。

▲ 穀物運搬車RU24468号

1920年代に石油の需要が増加し、燃料を安全かつ安価に輸送するために石油会社が所有した、私有タンク貨車SCA111号。最大積載量は14,138リットルと表記。

▲ タンク火車SCA111号

車体の側面が上下に開く木造ボギー貨車KKG1529号は、1911年製の競馬馬輸送車。この頃は、サラブレッドを鉄道で運ぶことが一般的だったとか。1974年まで使用。

▲ 競馬馬輸送車KKG1529号

二階建てのボギー貨車RSV29999号は、1959年から1968年までの間に550両以上製造されたヒツジ輸送車。オーストラリアならではの貨車も、今は道路輸送に切り替り。

▲ ヒツジ輸送車RSV29999号

乗客の荷物や小荷物、軽い品物を積んで、上記の気動車(RAIL MOTOR)が牽引する小さな木造有蓋車GT83号。1929年から1942年の間に12両造られ、最後の1両が引退したのが1979年。

▲ GT83号

車体全面にルーバーのあるLV2074号は、野菜や果物を運ぶ通風車。1920年代の製造だとか。

▲ LV2074号

3両連結した2軸の木造石炭ホッパー車。手前からB4295、SB49D、L953号。1890年から1912年の間に1000両以上製造され、一部は鉄鉱石輸送にも使用。

▲ 石炭車B4295号

石炭貨車に直通ブレーキが備わったいなかった時代に、石炭列車に連結してブレーキ力を補った緩急車。CHG16995号は、46両の同型車と1950年代の初めまで使われた、最後の世代の緩急車。

▲ 緩急車CHG16995号

ボギーの鋼製石炭ホッパー車BCH32259号。ドイツの設計で、1951年から1962年に国内で1700両製造。

▲ 石炭車BCH32259号

W39号は、線路の保守のための砕石(バラスト)運搬車として、1891年から1962年まで使用。

▲ バラスト運搬車W39号

控え車を連結した3軸のクレーン車L1327号は、事故時に出動するクレーンで初期のタイプ。1884年の英国製で、吊り上げ能力10トン。その左に連結しているのは、保線用の枕木運搬車。

▲ クレーン車L1327号

ポート・ケンブラの製鉄所の構内で働いた産業用蒸気機関車、後部を見せている緑のBRONZEWINGに連結している白い貨車は、高炉から出た溶けた銑鉄を運ぶトーピードカー。この100トン積みのダンプカーAISの同型は、今も現役。

▲ ドーピード車AIS

11時過ぎに鉄道博物館に着いてから3時間近く、SUMMER RAIL MOTOR RIDESに乗って館内を見学していたら、もう帰りの時間。土曜日はピクトン駅行きの最終バスが14時過ぎ。タフムア行きの最終なら15時を過ぎてもあるけど、列車との接続が悪くてシドニー着が2時間後になるので、ピクトン乗り継ぎで帰ることに。

NSW鉄道博物館の公式ホームページへは、こちらからどうぞ。 バスの時刻表は、こちらにあります


戻る