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デンマーク鉄道博物館の電車
かつてのデンマークでは、電化区間はコペンハーゲンとその近郊に限定されていたので、電車の展示はこの1両だけ。Sトーグ(ドイツ語のSバーンに相当)と呼ばれる国電のMM718号は、1934年に製造され1972年まで稼働。正面のおでこに行き先、2枚窓の間に路線名を表示。中央にジャンパ栓、窓下の横にずれた位置にヘッドライトのある、なかなか個性的な顔つき。
▲ 電車MM718号
出力163hpのモータを4個装備。片側3個所の両開き扉は、低いホームからの乗降に対応したステップ付き。ホイールベースの長い台車の構造がよくわかりません。枕バネは重ね板バネ、その両側に見えるダブルのコイルバネは軸バネでしょうか。
▲ 電車MM718号の側面
運転室後部扉の部分は荷物室。吊革が下がっているので、乗客にも開放したのでしょう。
▲ 運転室後部は荷物室
冬季の保温のためか、デッキと仕切られた客車内には、4人と6人のボックスシートが並ぶ。
▲ 車内はボックスシート
非貫通式の連結面に窓はなく、6人がけの長椅子。
▲ 非貫通式の連結面には長椅子
電車の大型模型。42両のMM型電動車と21両のFM型付随車で、Mc+T+Mcの3両編成を21本組成したらしい。
▲ コペンハーゲン近郊電車のSトーグ模型
現代のSトーグは、短い車体で先頭車体だけ2軸、それ以降は1軸の4車体連節車。模型のようなユニークの電車を、背中合わせに2本併結して運行中。
▲ 現代のコペンハーゲン近郊電車のSトーグの模型
貨車
貨車は2両だけ。
白い車体の2軸貨車、IVK20308号は1902年製。外部にブレーキマンの小屋があり、高い位置に設けているのは、屋根の上から編成全体を見渡してハンドブレーキを操作するためでしょうか。
初期の頃は、貨車の入れ換え作業に手前の馬が使われたのだとか。
▲ 貨車IVK20308号
IVK2000型は、酪農国デンマークで食肉を輸送する貨車。車内には天井から肉を吊り下げるフックを装備。
▲ 内部には肉を吊るフックを装備
2軸の無蓋貨車、ZS508060号は1919年製の私有貨車。もとは、ブレーキマンが乗車して、機関士の合図でハンドブレーキを操作するブレーキ小屋が設置されていたが、1954年に撤去。酸や、鉱物油、石油やタールをはじめとする液体を入れた陶器製のコンテナーの運搬に2004年まで稼働。
▲ 陶器製のコンテナを運ぶ私有貨車と入れ換え用貨車移動機
貨車の後ろにいる小さな2軸車は、Shunting Tractor と呼ばれるガソリンエンジンの入れ換え用貨車移動機。馬や蒸気機関車に代わる入れ換え機として、1927年にフランスから導入。車両のナンバーはなく、“Jensen”の名で呼ばれているらしい。
業務用特殊車両
各種業務用特殊車両です。
正面4枚窓でL型車体、トラックターと呼ばれる2軸の入れ換え用貨車移動機57号は1953年のデンマーク製。フォードの6気筒で78hpのガソリンエンジンに機械式トランスミッション、ハンドブレーキという装備。
▲ 入れ換え用貨車移動機57号
木造車体で2軸のラッセル車8号。先端部のみ鋼製。日本のラッセル車のように線路上の雪を左右にかき分けるのではなく、一旦すくい上げてから左右に落とす構造。1869年製で1966年まで100年近く使用。後ろに蒸気機関車を連結して後押しするのだけれど、機関車のキャブからは前方が見えないので、運行時にはテンダの上に人がが立ち、キャブの屋根やラッセル車越しに前方を線路を監視したのだとか。
▲ ラッセル車8号
保線の職員が工事現場までの移動に使った車両が展示されています。
手動でクランクを上下させて動かすレールカー。2人がかりでも、これを走らせるのは大変だったでしょうね。
▲ 手動クランクのレールカー
その隣は三輪自転車。両手でレバーを前後に動かして漕ぐ構造のようです。
▲ 手で漕ぐ三輪自転車
枕木にレールを取り付けるボルトをねじ込むスクリュードライバー。犬釘を打ち込むんじゃないんですね。
▲ 枕木にレールを固定するスクリュードライバー
テルミット溶接でレールを接続する作業中。
▲ テルミット溶接
大きな車輪の4輪巡回自転車。前方に座っているのは視察の幹部職員でしょうか。
▲ 四輪自転車
軌道や信号、通信などの設備のメンテナンスにあたる職員の輸送には、軌道自転車が使われていたが、1926年から2サイクルのガソリンエンジンを装備したモータートロリーに置き換え。
▲ エンジン付きの巡回車
▲ ボンネット型の巡回車
▲ ボンネット型の後ろ姿
エンジンは8気筒で排気量3660ccのタクシーとして使われていた1933年製の自動車を、1944年に鉄道会社が中古で購入し、会社の幹部の視察用にタイヤを鉄輪に改造したモータートロリー。
▲ 自動車を改造したモータートロリー
国鉄バス
1935年、オーデンセ製の国鉄バスで定員21人。この時点で、デンマーク国鉄は64路線に204台のバスを運行していたとか。6気筒で出力90hpのエンジンを搭載し、最高速度80km/h。石油が不足した第二次世界大戦中は木炭ガス車に改造され、1954年まで使用。
▲ 国鉄バス
鉄道連絡船
デンマークは、ユトランド半島とバルト海に浮かぶ多くの島々で構成する国。鉄道は国内各地や隣国との間で海を渡る必要があり、今は橋と海底トンネルで結ばれているものの、かつては多くの航路に鉄道車両を搭載する連絡船が運航されていました。鉄道博物館に実物の船は持ち込めないので、多くの船の模型や船室のモックアップで当時の状況を今に伝えています。
▲ 舵輪のある船のコーナーに多くの連絡船の模型
▲ レシプロエンジンの鉄道連絡船のカットモデル
港の線路は船内につながり、蒸気機関車で積載する車両の入れ換え。
▲ 列車航送の港の模型
連絡船の船室のモックアップも。
▲ 連絡船の船室
これは、鉄道連絡船に取って代わった海底トンネルの模型のようです。
▲ 海底トンネルの模型
その他
インターシティーで運行する、IC3型ディーゼルカーの客室のモックアップ。内部はテーブル付きのゆったりとしたボックス席。
▲ IC3型ディーゼルカーのモックアップ
▲ IC3型ディーゼルカーのボックス席
キッズコーナーを設けているのも北欧らしいところ。
▲ キッズコーナー
HOゲージのジオラマも。
▲ ジオラマ