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旅の車窓から

スペイン バルセロナ・マヨルカ島・タラゴナ

スペイン第2の都市バルセロナからLCCで地中海に浮かぶマヨルカ島へ。島内を鉄道で巡り、再びバルセロナから地中海の海岸コスタドラーダ沿いの在来線でシッチェス、タラゴナに向かう鉄道の旅にご案内します。


スペイン地中海のお正月

2018年の正月に、冬でも温かいスペインの地中海に行きました。スペイン第二の都市、カタルーニャ州の州都バルセロナ。さらに南へ200km、地中海に浮かぶリゾートの島、マヨルカ島まで足を延ばすことに。この旅の目的には、マヨルカ島の木造電車が木造客車を牽引するソーイェル鉄道の乗車と、バルセロナから海沿いに快速で1時間余りのヒラノバにある、スペイン最大規模のカタルーニャ鉄道博物館を含めていました。

年末年始に安い航空券を入手するには、早い時期の手配がかかせません。でもこのご時世、前年には予約していたバルセロナのホテルから50mほどのところ、ランブラス通りの歩道にイスラム過激派がクルマで突っ込むテロが起き、カタルーニャ州が独立を宣言してスペイン政府と対立、バルセロナではゼネストに突入する等、予期せぬ出来事が次々と。

12月の中頃に詳細日程を詰めていると、マヨルカ島のソーイェル鉄道のホームページに改修工事で1月末まで運休の情報が。ヒラノバの鉄道博物館も、2017年は12月中旬から31日まで休館。2018年のスケジュールがホームページに出ていないので、“日本からバルセロナに行くけど年始は開いてる?”とメールで問い合わせると、“ごめんね、改修工事で1月31日まで休館。また次の機会に来てね”との返答でガックリ。

旅行を取りやめようかとも思ったけど、羽田−バルセロナ往復66,220円に対してキャンセル料が30,000円。バルセロナ−マヨルカ往復の12,450円は、LCCなのでキャンセルしても返金無し。やっぱり行くしかないなあということで、大晦日の夜に羽田空港へ。

※ 13ページの末尾にそれぞれリンク先を設けました。詳しく知りたい方はご利用ください。


羽田から北京、ウイーン経由のバルセロナ

出発日を大晦日に、期間を成人の日の3連休までの8泊9日にしたのは、31日になると航空券が年末料金から通常料金に戻るから。バルセロナには日本からの直行便は無く、日系やヨーロッパ系の乗継便は航空券が高いだけでなく、現地到着が夜になるので治安の問題もありなるべく避けたい。アジア系では、夜に羽田を出発して深夜に乗り継ぎ、翌朝現地着のスケジュールが選べ、航空券も安いエアチャイナ、中国国国際航空の北京乗り継ぎを選択。

▲ 新年を迎える準備の整った羽田空港国際線ターミナル

お正月を迎える飾りつけができた羽田の国際線ターミナルから北京へ。乗り継ぎ時間は余裕の4時間。エアチャイナでは4時間以上の場合、空港の制限区域内にあるホテルのラウンジを無料で使えます。上海浦東の無料ラウンジと比べ、アルコールは別料金で貧相なラウンジでも、シャワーの利用は可能。

▲ 北京首都国際空港の無料乗り継ぎラウンジ

CA841便はオーストリアのウィーン経由のバルセロナ便。深夜なのに、A330は沖止めでバス移動。北京の冬は寒い。

▲ 深夜に沖止めのA330へ

元旦の早朝にウィーンに着陸。一旦全員機外へ。ボーディングブリッジを出たところに係員がいて、ウィーンまでとバルセロナへの客を振り分け、ボーディングパスをもらって再び搭乗口へ。

▲ 早朝のウィーンで一旦降機

搭乗が始まりもとの席に戻ると、窓の外では放水車を使ってデアイシングの作業中。

▲ 翼の氷を落とすデアイシング

ウイーンを離陸すると、バルセロナまで残り2時間ほど。雲の隙間から、初日の出を仰ぎます。

▲ 2018年の初日の出


空港から電車でバルセロナの中心ランブラス通りへ

CA841便はほぼ定刻に、バルセロナ市の西にあるエル・プラット空港のターミナル1に到着。この空港は、南フランスからミラノに抜ける旅の入り口にして以来、1年と数か月ぶり。前回は空港から街の中心カタルーニャ広場まで、5.9€のアエロバスに乗り、1日半の滞在後にサンツ駅からTGVでフランスへ。

今回は空港と街の間を2往復、4回も乗車するので、ちょっと面倒だけどスペイン国鉄 renfe を使って運賃の節約。

▲ バルセロナ空港ターミナル間無料循環バスでターミナル2に到着

国鉄の空港駅は、主にLCCが使っている古いターミナル2から連絡。ほとんどの国際線が着くターミナル1からは、空港ターミナル間無料循環バスに乗って10分余りでターミナル2。一旦ターミナルビルの中に入り、2階に上がって長い連絡橋を渡ります。

▲ ターミナル2から駅に続く長い連絡橋

渡り終えて階段を降りたところが国電の空港駅。赤い長距離用とオレンジのバルセロナ周辺用の券売機が別々に並んでいます。

▲ スペイン国鉄 renfe の券売機

ここで市内までの片道切符を買うと4.6€(当時。その後5.15€に値上げしたらしい)。でも、例外的に市内交通1zoneの回数券(当時は10回で10.2€、その後11.35€に値上げ)が使えるので、片道1.02€(当時)でバルセロナ市内まで行くことができ、75分以内ならそのままメトロに乗り換えも可能。

なお、最近部分開通したメトロ9号線がターミナル2経由でターミナル1まで空港に乗り入れたけど、1zoneの回数券は対象外。都心へ向かうには乗り換えも必要となり、使えない路線です。

▲ 国電 Rodalies の券売機

駅構内にカフェテリアはあっても、有人の切符売り場は見つかりません。1年数か月前の前回の旅行時に買った、10回券の使い残しを持ってきたので自動改札機に通すと、扉は問題なく開きます。回数券は3か月の日本と違い、次回の値上げまで有効期間があるらしい。

▲ 前回の旅行で残った10回券を自動改札機に通す

駅は、降車と乗車の2本のホームに挟まれた単線の頭端式。首都マドリードなど、スペインの都市近郊の国電区間でよく見かける、赤と白に塗り分けたセルカニアスの電車が入線。R2系統の一部が分岐して空港に乗り入れているようで、毎時8分と38分発で30分間隔の運行と本数は少ない。バルセロナの中央駅に相当するサンツ駅などを経由して市内を通り抜け、北東に位置するサント・セロニ行きと、途中のグラノリェース折り返しを交互に運行。

▲ R2系統の折り返し電車が入線

車両は5車体連節構造の2扉車、465型電車を2本併結。バルセロナ周辺だけ、ロダリエス・デ・カタルーニャの名のもとにオレンジと白への塗り替えが行われているようで、片方の編成は正面に大きなRのマークの新塗色。これをカタルーニャ州の独立と絡ませるのは、勘ぐり過ぎか。

▲ バルセロナ近郊路線ロダリエス

ロダリエスの車内はセミクロスシート。ロングシートの部分も1人ずつ独立した座席。軌間1668mmの広軌とあってか、車体幅が広く余裕があります。

▲ 車内はセミクロスシート

中間の3両目の片側扉の周辺だけは、床を下げた車いす対応スペースになっていて、広いトイレも設置。

アエロバスに比べ、電車はスリや置引きなど治安の問題が指摘されているけど、昼間でこれだけ空いていれば問題は少ないのでは。

▲ 中間の一両はドア付近低床で車いす対応

空港駅から20分でサンツ駅に到着。ここでもメトロに乗り換えできるけど、新幹線AVE等の長距離列車が発着するサンツ駅では、大きな荷物を持って移動する旅行者は狙われやすいとのことで、次のパセジ・ダ・グラシア駅まで乗車。向かいのホームには、オール二階建て451型のロダリエス。

▲ パセジ・ダ・グラシア駅 対向ホームには2階建てロダリエス

乗り換えたメトロ3号線は、スリやひったくり多発の要注意路線。でも昼間にこれだけ空いていれば危険性は少ないのでは。

▲ メトロ3号線に乗り換え

カタルーニャ広場の次、ホテル最寄りのリセウ駅で下車。

▲ メトロ3号線でリセウ駅に到着

地上に出ると、そこはバルセロナの中心カタルーニャ広場と港を結ぶ旧市街のメインストリート、ランブラス通り。中央に広い歩道があり、その両側が一方通行の車道になっています。数か月前にこの場所でイスラム過激派がクルマで歩道に突っ込むテロが発生。今はクルマが入れないよう歩道の入口にガードを設置するとともに、パトカーが警戒にあたっています。

▲ ランブラス通りの歩道に警戒中のパトカー

ネットで予約したホテルは、ランブラス通りのオペラハウス、リセウ大劇場の横の路地を50mほど入った便利な立地。でもここは、旧市街のラバル地区。かつては、麻薬密売や売春組織が巣くうバルセロナで最も危険な地域とされてたところ。ホテルはまだこの地区のほんの入り口だけど、夜は観光客は奥まで入らない方が良いのかも。

▲ ラバル地区のホテルに到着


オールドトラムを訪ねてみたけど

ホテルでしばし休憩後、再び元旦の人出でにぎわうランブラス通りへ。

▲ ランブラス通り

歩道の床面、歩行者の足元にはカタルーニャ出身の巨匠、ジョアン・ミロ作の巨大なモザイク画。

▲ 歩道にスペインの巨匠 ミロのモザイク画

向こうの山の上に建つ城のような建物は、ティビダボ山の遊園地に隣接する教会。地下鉄の駅と山に登るケーブルカーの駅の間を、スペインで一番古い路面電車が結んでいて、土日祝日運行とのこと。

▲ 遊園地のあるティビダボ山

2001年に初めてバルセロナを訪れた時に乗車しているけど、この日は元旦の祝日なので18年ぶりに再訪してみることに。ランブラス通りをカタルーニャ広場まで歩いて地下駅へ。

▲ カタルーニャ広場の地下駅

Tramvia Blau(ブルートラム)に接続するアベニーダ・ティビダボへは、カタルーニャ公営鉄道が運行するメトロ7号線。始発のカタルーニャ広場では、頭端式のホームに3両編成の電車が待っています。切符はもちろん、国鉄や他のメトロやバスと共通。1回券の2.2€(当時)に対して、1回当たりが約半額の10回券で乗車。

▲ メトロ7号線はカタルーニャ公営鉄道

車内はボックスシートとロングシートの組み合わせ。メーターゲージで車体幅が狭く、スペースを確保するための座席配置でしょう。ドアの位置に床から立ち上がったつかみ棒が珍しい。

▲ 車内はセミクロスシート

10分ほどの乗車で、終点のアベニーダ・ティビダボに到着。

▲ アベニーダ・ティビダボ駅に到着

均一区間なので、駅から出場時にはチケットは不要。そのまま自動ドアが横にスライドして開きます。日本の自動改札機に比べ、飛び越えて不正乗車されないよう、がっちりガードしています。

▲ がっちりガードした自動改札機

階段を上がって地上に出ると、交差点の向こうにブルートラムの乗り場。

▲ 右が青の路面電車(Tramvia Blau)の停留所

停留所には、路線図と土日祝日10時から18時15分までの運行時間に、運賃5.5€(観光客料金で高い!)の掲示があるものの、電車がいなければ、電車を待つ乗客の姿もありません。

▲ 路面電車の路線図と運行時刻

しばらく待っても来ないので、電車通りを歩いてみると、ここはバルセロナの山手なのか、両側には立派な邸宅が。

▲ 塀の向こうに邸宅

▲ フレスコ画のようなものがある邸宅 トッレ イグナシオ ポルタベラ

▲ これはレストランのよう

▲ ISDEはビジネススクールらしい

通りが大きくカーブして急な上り坂にかかる手前に、単線の分岐線を見つけました。

▲ 左にカーブして上り急こう配が始まる

線路をたどっていくと車庫のような建物があるけど、扉は固く閉じられています。

▲ 車庫の扉は閉じられていた

車庫の向こうには、小型の潜水艦のようなものも。

▲ 小型潜水艦?

諦めて来た道を始発の停留所まで戻り、もう一度掲示をよく見ると、クリスマスと元旦、12月25日と1月1日は運休とのこと。ブルートラムは空振りに終わり、今週末にバルセロナに戻ったときにもう一度、出直すことに。