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オーストラリア6日目、シドニー3日目はは日曜日で、オパールカードはどれだけ乗ってもAU$2.8を越えるともう課金されません(月〜土曜はAU$16.1が上限、ただし空港と市内間の運賃を除く)。その他にもオフピーク時割引や乗り継ぎ割引等、日本のスイカ等に比べるとかなりお得 。
シドニーから西へ100kmの、ブルーマウンテンを往復してもわずか220円ほど。でも、この日は夜便で帰国の予定。遠出は危険なのでシドニー市内で過ごすことにして、セントラル駅へ。
▲ セントラル駅
シドニーのトラムには、1997年に開通した中央駅と西の郊外のダルウイッチ・ヒルを結ぶシドニーライトレールがあり、訪問時には工事中だった、サーキュラーキーから都心のタウンホール、セントラル駅を経て南東に向かうランドウィック線が2019年末に開業 。
それ以前には、19世紀に開業してから1962年まで、市内を縦横に運行していた路面電車がありました。市の南の郊外に歴代の車両を保存しているトラム博物館があり、動態保存車も運行しているというので行ってみることに。
▲ T4系統は地下ホームから発車
シドニートレインズのT4系統は、セントラル駅の地下ホームに発着。使用している車両は、1980年代末から90年代の登場したタンガラの愛称のある二階建て、T型の4両編成を2本併結した8連。
▲ タンガラのロゴ
ドアから車端部はロングシート。
▲ ドアから車端部はロングシート
一階と二階席は、階段の方を向いた固定式のクロスシート。二階側面の窓ガラスは、屋根まで回り込んだ展望に優れたデザイン。これ以降の新型式はコストダウンのためか、ガラスの回り込みを止めています。
▲ 一階と二階席は固定式のクロスシート
セントラルから南へ40分ほどでロフタスに到着。
▲ ロフタス駅
▲ ロフタスを発車して行くT4系統タンガラ
駅のホームから、柵の向こうにトラムの姿。
▲ ホームからトラムが見える
シドニートラム博物館は、他の多くの鉄道博物館等と同様にボランティアによる運営らしく、開館日は日曜と水曜の週に2日だけ。線路の向こうに、この日運行している動態保存のトラムが2両。
▲ 2両の動態保存車が運行
紺色の制服を着たスタッフから、動態保存車の一日乗車券を兼ねた入場券を買い求めます。訪問時点でトラムの廃止から既に52年。スタッフは、現役当時の運転士や車掌の方々かも。車掌さんのカバンも現役当時のものか、年季が入っていそう。
▲ スタッフからチケットを買い求める
トラムの線路のすぐ横を、シドニートレインズが通り過ぎていきます。
▲ すぐ隣をシドニートレインズが通過
この日運行していた2両のうちの1両、611号はメルボルンのY型で1930年製。ワンマン運行用に前と中の2扉で、側窓は上段が内側に折れて開き下段は下降式。わずか4両の製造のとどまり、数日前に訪問したベンディゴのトラム博物館に同型の610号がいました。
▲ メルボルンのY型611号
車内の床は、乗りやすいようにドア付近を下げて、台車の上は一段高くなった構造。座席は、ドア付近にロングシートがあり、床の高くなった部分は転換式のクロスシート。
▲ 車内は転換式クロスシートとドア付近はロングシート
トラム博物館を出ると、こんな単線の専用軌道を走行。
▲ こんな専用軌道を走行
途中に幹線道路の踏切もあり、2.5kmほど走った先で行き止まりの終点。廃止された鉄道線を利用したらしく、ホームがあるけど高さが合わず、トラムは反対側のドアを開けて乗客は一旦下車。
▲ 終点に到着
車掌さんが前後のポールを上げ下げして付け替え、しばし休憩の後トラム博物館に向けて折り返します。
▲ ここで折り返し
稼働していたもう一両のトラムは、ブリスベンのフェニックス型548号で、1963年製と比較的新しい。
▲ ブリスベンの548号
前後に加えて中央部に2個所の4扉車で、戸袋部を除いて窓は下降式。
▲ 4扉車
扉の部分は床が一段低くなっていて、座席はボックスシート。
▲ 車内はボックスシート
車両を乗せて横に移動する、トラバーサーもあります。
▲ トラバーサー
車両の展示館には、歴代のシドニーのトラムを保存。ここでは主な車両を数点ご紹介します。使用する写真は、極力ダブらならないようにして、別のページで詳しくご紹介しています 。
木造車体の中に蒸気機関車を収容した蒸気トラム、1A号1879年の米国のボールドウイン製。客車を3両牽引して街中の道路を走行したのだとか。
▲ シドニーの蒸気トラム
両方に大きなヘッドライトがあるので、前後どちらにも走れるのでしょう。缶焚きはこちら側で行っていたようです。
▲ 前後に走れる構造らしい
足回りにはシリンダーと2軸の動輪。
▲ シリンダーと2軸の動輪
1A号をはじめ一部の車両には、このような説明の看板が立っています。
▲ 説明の看板も用意
シドニーの2軸の木造電車、C型29号は1989年製で動態保存車。
▲ シドニーのC型2軸車29号
29号の運転台。左に大きな直接式の制御器。右の車体の外にはハンドブレーキのハンドル。
▲ 29号の運転台
側面の窓下には、ニューサウスウェールズトラムウエーズのマーク。同型車が一昨日に訪れたパワーハウスミュージアムにも保存されていて、同じマークを付けていました。正面の行き先表示器はなかったので、29号には後付でしょう。
▲ ニューサウスウェールズトラムウエーズのマーク
393号は1902年製のF型で、シドニーで最初のボギー車の型式。運転台とその後部が開放式、中央部が密閉式の客室を持つ構造。
▲ シドニーのF型ボギー車393号
154号は1900年に393号と同型のF型として製造され、1926年にコンパートメントの並ぶLP型に改造。方向幕が正面窓上に移行。動態保存車。
▲ シドニーのLP型ボギー車154号
728号は1906年製のN型ボギー車。両端のオープンデッキの運転席の後ろにも座席があり、中間にはコンパートメントが6室。動態保存車。
▲ シドニーのN型ボギー車728号
車体の外に吊革がぶら下がっているのは、これをつたって車掌さんが外側から各コンパートメントに検札に来たのでしょうか。
▲ 各コンパートメントに扉
特殊な車廊も保存されています。134s号は1899年製のD型2軸車を、業務用の線路のクリーニングカー(スクラバーカー)に改造したもの。
▲ シドニーのD型2軸車を改造したレールクリーニングカー134s号
1909年製のボギー車948号には、片方の側面に窓がなく、囚人の移送に使われた、世界で唯一の刑務所トラム。
▲ 囚人護送車648号
車内は片側廊下で、独房の窓には金網。
▲ 金網の入った監房
トラム博物館にはバスもあります。1952年製の2619号は、ボンネットタイプの二階建ての動態保存車。
▲ シドニーの二階建てバス
19号は1937年製の二階建て、後輪が2軸のトロリーバス。
▲ シドニーの二階建てトロリーバス
見学を終えて立ち寄ったのは、シドニーのR型トラムの車体を使った売店。カレンダーを買って、会計時にレジのところで見つけたのが、日本の路面電車の写真。尋ねてみると、“ちょっと待って、見せてあげる”。
▲ シドニーのトラムの車体を使った売店
案内してくれたスタッフの方が、非公開の建物の通用口の扉を開けると、そこは稼働中の動態保存車の車庫。メルボルンの249号の隣にいたのが、長崎電気軌道1054号。さらにもとをたどれば、仙台市電の121号。
▲ 長崎電軌軌道の1054号
集電装置をZパンタからトロリーポールに交換し、方向幕の上にポールを操作する紐の擦れどめのバーを追加、車掌さんが乗務してワンマン運行は行わないためかバックミラーを撤去したした以外は、塗色も含め長崎当時の姿。
▲ 方向幕も長崎のまま
車内の吊り広告も、長崎当時の日本語のまま。
▲ 長崎時代の吊り広告
今では、世界で唯一の稼働する仙台市電の生き残りとなった長崎の1054号は、隣のシドニーR型1740号など、他の動態保存車とともに定期的に運行されているとのことです。
▲ 隣にはシドニーのR型1740号
シドニートラム博物館については、こちらで詳しく紹介しています。