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ゴールドラッシュで栄えた街ベンディゴ

キャッスルメインからV/Lineのディーゼルカーで30分、ベンディゴ駅に到着。ベンディゴはメルボルンから北西に131km、人口75,000人のヴィクトリア州で4番目の街。1850年代にヨーロッパ移民が開拓を始め、ゴールドラッシュの時代には多くの中国人移民も金鉱で採掘にあたっていたのだとか。

▲ ベンディゴ駅

駅前には、キャッスルメインで見かけたのとよく似た、2連のレンガ造りの倉庫のような建物。側面には貨物ホームのような一段高くなった部分も。今は、ディスカバリー・サイエンス & テクノロジーセンターとして、科学技術の体験学習ができるような施設に使われているらしい。

▲ 駅前のディスカバリー・サイエンス & テクノロジーセンター

駅から旧市街の交差点を目指します。沿道の商店街には、ゴールドラッシュの名残を伝えるような建物が並んでいます。

▲ 駅からチャリングクロス交差点に向かう通り

駅からの通りがトラムの通るメインストリートに出会うところが、チャリングクロスの交差点。ここまで徒歩で10分ほど。1881年に造られた噴水は、大英帝国ウエールズの王女の名前を付けた、アレクサンドラ噴水 。

▲ アレクサンドラ噴水

その横に立つのは、第一次世界大戦と第二次世界大戦のベンディゴ慰霊碑。

▲ 第一次世界大戦と第二次世界大戦の慰霊碑

真夏のクリスマスから1週間後。隣の公園には、まだクリスマスツリーが残っています。右の奥に見えるドーム屋根は、ソルジャーズメモリアル・インスティテュート・ミリタリーミュージアム。

▲ 真夏の公園にクリスマスツリー

 

ベンディゴのトラム

チャリングクロスの交差点に、屋根とベンチのあるトラムの停留所。

▲ トラムの停留所

その脇には、1990年に設置されたベンディゴトラム100周年の碑。ベンディゴ市内にトラムが登場したのは1890年。バッテリー駆動の車両で運行を開始。今なら最新型でも、当時のバッテリー駆動では路線のこう配に対応できず、わずか3か月で運行停止。1892年には、ベンディゴトラムウェイズ会社が蒸気動力のスチームトラムで運行を開始。電化して、電車が走り始めたのが1903年。

第一次世界大戦後に、準政府機関であるビクトリア州電力委員会が買収して、州内のバララットやジーロンとともにベンディゴのトラムを運行してきたが、赤字のため1970年に民間のバスへの置き換えを決定。1972年にトラムの通常運行を廃止。同年から一部の路線を残して、観光用にビンテージカーを運行して現在に至ります。

▲ 停留所にあった碑

現存の路線は、市の南西部にある金鉱跡の博物館 Gold Mine から、古い街並みが残り歴史的建造物が多い旧市街を経て、ゴールドラッシュの時代に多くの中国人労働者が滞在していたことから中国仏教寺院の残る北東郊外の JOSS HOUSE の間、片道所要21〜22分。10時から16時まで、昼休みを除いて30分間隔の運行です。

金鉱博物館方面から電車がやってきた。

▲ 金鉱博物館方面から電車がやってきた

ポール集電の木造ボギー車44号は、1914年に南オーストリア州の州都アデレードで製造された、メルボルンのトラムE型で、1951年にベンディゴに譲渡。2010年に、メルボルンでの製造当時の姿に復元したもの。

▲ もとメルボルンのトラムE型の44号

当時のメルボルンのボギー車で一般的な、前後のオープンデッキの乗降口に加えて、中央3ヶ所に扉のない出入口を設けた構造。独立した運転室もオープンで、扉は無し。側面窓は下降式。正面3枚窓のうち、中央が横にスライドして開く構造が珍しい。

▲ 交差点で信号待ちの44号

44号はチャリングクロスの停留所で乗客を乗せ、JOSS HOUSE 方面に向かいます。この先は、センターポールの複線区間。電柱にはサンタクロース。

▲ 停留所の44号

しばらくすると、複線区間を GOLD MINE 行きの369号が来ます。一端にポールを装備しているものの、シングルアームのパンタグラフを使用。

▲ もとアデレードのトラムの369号が複線区間をやってきた

ポイントを渡って停留所に停車した369号に乗車。運転士から乗車券を買い求めようとすると、終点の金鉱博物館の受付で購入するようにとのこと。

▲ 単線になって停留所へ

369号は1929年製、アデレードのトラムH型。側窓は2段で上段が固定、下段が下降式。

▲ 出入り口付近はロングシート

車体の中央部は転換式のクロスシート。真ん中に仕切りがあるのは、昔は喫煙室と禁煙室にでも分けていたのでしょうか。

▲ 中間は転換式クロスシート

 

トラムの終点の金鉱博物館

電車はチャリングクロスから数分で、終点の GOLD MINE に到着。ここにあるセントラル・デポラ・ゴールド・マインは、ベンディゴで一番最後まで金を採掘し、1954年に閉山した金鉱山跡を活用した博物館。ゴールドラッシュの時代の展示と、地下の坑道を巡るガイドツアーがあるが、ここに来た目的はトラムだけなので、博物館の受付ではトラムの乗車券だけを購入。

▲ セントラル・デポラ・ゴールド・マイン

観光用のトラムなので、乗車券は全線乗り放題の2日券のみ。AU$18、1500円弱でなかなかいい値段。2日も要らないけど、トラムの維持のための寄付のようなものでしょう。

向こうにもう1両のトラムがいるけれど、次の JOSS HOUSE 行きは、369号がそのまま折り返すらしい。両端のドアは両開きの4枚折り戸で外開き。

▲ トラムの終点ゴールド・マイン

台車は郊外電車のようなイコライザー式。アデレード時代は連結器を装備して、2両編成の運行も行われていたらしい。

▲ 369号の台車

ポールを降ろして、隣の線路に停車しているのは、2軸車の302号。

▲ ゴールド・マインで待機中の2軸車302号

 

トラムからベンディゴ旧市内の車窓観光

再び369号に乗車。転換式のクロスシートは、ベンディゴ旧市内の車窓観光に最適。ゴールド・マインを発車した車窓に、尖塔の高さ87mのサクレッド・ハート大聖堂。メルボルンのセントパトリック大聖堂、セントポール大聖堂とともに、オーストラリア最大の教会の一つ。完成は1977年で新しい。

▲ 車窓のサクレッド・ハート大聖堂

先ほど乗車したチャリングクロスの交差点のすぐ先の公園の中に建つ、ソルジャーズメモリアル・インスティテュート・ミリタリーミュージアム。オーストラリアは隣国ニュージーランドとともに、英国の自治領として本国を支援するために、第一次世界大戦で派兵しており、植民地時代から現在までの軍事紛争と平和維持におけるビクトリア州の貢献に関する展示があるのだとか。

▲ ソルジャーズメモリアル・インスティテュート・ミリタリーミュージアム

公園内の隣には、金鉱開発でベンディゴの発展に貢献した英国人、ジョージ・ランセルの像。

▲ ジョージ・ランセル像

ゴールドラッシュ時代の建築の最高傑作とされる、ベンディゴを代表する4つ星ホテルのシャムロック。19世紀末の建設で下層部はコロニアル、上層部はバロック。内装も19世紀の豪華でノスタルジックなものだとか。

▲ ホテルシャムロック

このホテルから、電車通りの向かい側に建つのが歴史的な郵便局。今はアートギャラリーになっているらしく、ツーリストインフォメーションも入居しているが、撮り損ねた。同時に建てられたのか、郵便局とそっくりな隣の建物はベンディゴ市役所。

▲ ベンディゴ市役所

市役所斜め向かいのカフェも、歴史のありそうな建物で営業中。

▲ 歴史的な建物で営業するカフェ

カフェの先で、トラムの路線は再び単線に。この場所に建つバルコニーを巡らせたコロニアル調の建物。

▲ 外周にバルコニー

その隣の石造りの建物の正面上部には、SCHOOL OF MINES AND INDUSTRIES、下部には MECHANICS INSTITUTE & FREE LIBRARY の文字。学校と図書館だったようだが、調べてみると今は BendigoTAFE 、職業教育研究所らしい。

▲ ベンディゴTAFE

さらに行くと、赤レンガの学校があり、その先にトラムのすれ違いができる信号所。

▲ 学校のホールらしい

 

トラム博物館

信号所の先に分岐線があり、ここでトラムは右折して脇道に入っていき、橋の上で停車。下車した乗客が向かうのはトラム博物館。電車はしばし停車後、JOSS HOUSEに向けて発車していきます。

▲ トラム博物館で多くの乗客が下車

ここにはベンディゴトラムの車庫や修理工場があり、構内や車庫の一部をトラム博物館として公開。入場料金はトラムの2日券に含まれているので、下車した乗客はそのまま見学ができます。

▲ トラムのデポ兼博物館

庫内には、ベンディゴ以外にもメルボルンやバララットなど、各地から集められた動態保存車や、修理中の車両、これから復元工事に取り掛かる車両などが収容され、工房の奥ではメルボルンの35系統シティーサークルで運行するW型の更新工事も行われています。

綺麗に復元されたベンディゴトラムの2軸車、オープンデッキの8号が庫外に待機中。まだ一部の座席の取り付けが終わっておらず、見学者が乗らないように黄色いテープを張っています。

▲ ベンディゴのトラム8号

車庫の中には動態保存車。奥には工事中の車両の姿も。

▲ 車庫のこの場所には入れないので外から望遠で

ベンディゴのトラム博物館と博物館が所有する車両については、こちらで詳しくご紹介しています