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リヒテンベルク駅

乗り換えるローカル列車は、Sバーンでリヒテンベルクの2駅手前、東西の路線と南北の路線が十字に交差するオストクロイツ(東十字)駅が始発。わざわざここまで来て乗り換えるのは、この駅の側線に東ドイツ国鉄の看板列車が保存されているから。

ヴァルトジーヴァスドルフホームの向こうに留置されているボンネットタイプのVT18.16型は、西ドイツ国鉄が国際列車TEEで運行した丸い流線型のVT11.5型ディーゼル特急のライバルとして、東ドイツ国鉄DRが1963年から国際路線に投入したディーゼルカー。両先頭車の丸窓のある機関室に、それぞれ900または1000PSのエンジンを搭載して最高速度160km/h。

▲ 東ドイツ国鉄のVT18.16型ディーゼルカー

先頭の機関室下の台車のホイールベースが極端に長い。1980年頃まで、ベルリンからチェコのプラハ経由でハンガリーのブダペストとオーストリアのウイーンをむすび、連絡船航送によるロストクからデンマークのコペンハーゲンやザスニッツからスウェーデンのマルメ等の西側の都市にも乗り入れ。それらの国々の列車と遜色のない性能と設備を誇り、東西ドイツの統一からドイツ鉄道の統一後は、動態保存的に2003年頃まで稼働していたのだとか。保存車は東ドイツ国鉄DRの表記に戻されています。

▲ 機関室のある先頭車両

リヒテンベルク駅を単機回送で通過する、見慣れない塗色のディーゼル機関車。正面に型式と車両番号の標記もなく、何処の何型でしょうか。

▲ 単機回送のディーゼル機関車

赤と白に塗り分けたDBの車両が並ぶ、リヒテンベルク駅に隣接する車両基地。

▲ リヒテンベルク駅横の車両基地

▲ DBの車両が留置中

この日は5月1日、メーデーの祝日。日曜祝日のドイツでは、デパートやスーパーも含めほとんどの店舗が閉まる中で、駅構内の店舗は営業。駅は旅行者や消費者の強い味方です。

▲ 駅中のスーパーマーケット

 

ローカル列車でミュンヘベルクへ

オストクロイツが始発のコストシン行きのローカル列車に乗って東へ、ミュンヘベルクに向かいます。終点のコストシンは国境を越えたポーランド側の街。こんなローカル列車でも国際列車です。

青と白の車体は Verkehrsverbund Berlin-Brandenburg (VBB) ベルリン・ブランデンブルク運輸協会。ベルリン州とブランデンブルク州にに加えて自治体が出資する三セクが、ドイツ鉄道DBのローカル輸送を担当しているらしい。

▲ ポーランドのコストシン行きのディーゼルカー

車体にPESAのロゴが描かれたVT632型は、ポーランドのペサ社が製造した2車体連節構造のディーゼルカー。前後の動力台車とエンジンの上、それに連接台車の部分が高床で、車体中央に一箇所だけある扉付近の床を低くした部分低床車。2本併結した4両編成。

▲ 車内は部分低床式

高床部分はボックスシート。車掌さんが検札に回ります。

▲ 車掌さんが検札

リヒテンブルク駅のスーパーマーケットで仕入れた、ビールとサンドイッチで遅い昼食。

▲ ビールとサンドイッチで遅い昼食

ローカル列車は、40分ほどでミュンヘベルクに到着。

▲ ミュンヘベルクに到着

色灯式信号機の横を、この先ポーランドに向けて走り去る列車。

▲ ミュンヘベルクを発車していくローカル列車

下車した数名の乗客はすぐにどこかへ行ってしまい、立派な駅舎はあるけど閉鎖されていて中に入れず、無人駅にポツンと一人。

▲ ミュンヘベルク駅舎

駅は市街地から離れているようで、駅前には何もなく、歩いているのは一緒に下車した乗客の一人。

▲ 駅前通り

島式ホーム1面2線から、駅舎側の線路が撤去され跡があり、片面1線だけに。

▲ 線路の撤去後

そのホームの中央にある階段に、Buckower Kleinbahn (ドイツ語の klein は小さいという意味なので、日本語訳はブッコー小鉄道でしょうか)、土曜、日曜、祝日 ↓ の看板。

▲ 地下道にブッコー小鉄道の看板

駅舎の反対側にある地下道の出口には電車が描かれ、その向こうには架線が見える。

▲ 地下道の出口に電車の絵

積み上げた木材の先には、腕木式の信号機。この広い空き地には一部に線路も残り、かつては貨車が並んでいたのかもしれません。腕木式信号機は線路の方向から角度が90度ずれているので、ホームから見やすい方向に移設して保存しているのかも。

▲ 保存された腕木式信号機


ブッコー小鉄道

駅の地下道を抜けて架線のある低いホームで待っていると、向こうから2軸のTcMc2両編成の小さな電車がやってきた。

ミュンヘベルクとブッコーを結ぶ、全長わずか4.9kmのブッコー小鉄道。1897年にブッコーの町と幹線の駅ミュンヘベルクを結ぶ、軌間750mmの軽便鉄道として、蒸気動力で開業。1930年に標準軌に改軌するとともに電化。戦後は東ドイツ国鉄に統合され、ドイツ統一後は電気設備を休止してレールバスを運行していたが、1995年に通常運行を終了し、夏期の週末等の限定臨時運行も1998年に終了。

▲ 電車が到着

その後は博物館鉄道として再起し、変電設備も修復して2002年から電車による週末の運転を開始。2010年には架線が盗難に遭い、数ヶ月のレールバスによる運行を経て、スポンサーの協力で電車運行が再開して現在に至るのだとか。ボランティアで運営されていて、訪問時は土曜、日曜、祝日に昼休みを除き1時間間隔で1日7往復を運行。

▲ Mc+Tcの編成

この日は5月1日メーデーの祝日で運行日。前回のベルリン訪問時には曜日が合わなかったので、今回はブッコー小鉄道の訪問に合わせてスケジュールを作成。

この四角い車体の2軸の479型電車は、1930年電化当時からの車両の更新車。貨車のような2段リンク式の台車に吊りかけモーター。

▲ 貨車のような台車に吊りかけモーター

連結器はリンクとバッファ。右の電動車は両運転台、左の制御車はミュンヘベルク側だけの片運転台。

▲ バッファを突き合せた連結面

発車時間が近づくと乗客が集まってきた。ベルリン方面からの接続列車はなく、ブッコーからから乗ってきてここで降りた人も戻ってきているので、自宅から乗ってきたクルマをブッコーに置いて、ミュンヘベルクを往復しているのかも。

▲ 乗客が集まってきた

先頭になる電動車に乗車。運転席には、左手にクルマのハンドルのような丸い取っ手の制御器。右手にブレーキ弁。

▲ 運転室の機器

車体中央の扉の部分がデッキになっていて、その前後が客室。側窓2つのブッコー側客室はロングシート。 更新工事を受けているからか、1930年製とは思えない近代的な車内で、平らな天井が珍しい。

▲ ロングシートの車内

側窓3つのミュンヘベルク側客室は、窓側に小さなテーブルのあるボックスシート。

▲ ロングシートの車内

乗客の大半は子供と一緒の家族連れ。切符は車内で車掌さんから購入。

▲ 車掌さんから切符を購入

扉を開け放った運転室は、運転士が招き入れた子供達で満員。背が届かない小さな子供にも前が見えるよう、運転中に折りたたみ式の踏み台を広げて手渡ししています。

▲ 運転室は子供たちでいっぱい

アジア人が珍しいのか、女の子の父親が“どこから来たの”と英語で声をかけてきます。日本からというと“日本に行ったことがあるよ。Shinkansenに乗った”。これに乗るために2度目のベルリンに来たよ。ハイスピードトレインより、こんな小さな電車の方が好きなんだ。

途中にある唯一の中間駅は、ホーム片面1線だけのヴァルトジーヴァスドルフ。こんなところでも、乗客が待っています。

▲ 中間駅のヴァルトジーヴァスドルフ

運転室右側の窓柱に50km/hと書いてあるものの、最高速度は30km/h程度。はじめはPC枕木の立派な線路だったが、途中からは草むした線路をゴトゴト走り、14分かけて終点のブッコーに到着。

▲ ブッコー駅に到着した列車